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『その桜は何度でも美しく咲く。』 女子ホッケー日本代表「さくらジャパン」の小野選手にスポーツの価値についてお話をお伺いしました!~後編~

GUEST:小野 真由美

富山県小矢部市出身の女子フィールドホッケー選手。天理大学やコカ・コーラなどでプレー。ホッケー指導・普及も行いながら自身もホッケー女子日本代表「さくらジャパン」を牽引する日本を代表する選手。ポジションはFB。


今回は女子ホッケー日本代表「さくらジャパン」の小野さんと対談させていただきました。2部構成の後編です。

※本記事はnote移行前の旧SPODGEから2019年2月26日に掲載した記事になります。



ホッケーが抱える課題

ー今の日本女子ホッケーの環境や現状というのはホッケーの先進国と比べてどういった状況ですか?

女子ホッケーは、日本はもちろん世界的にもメジャーではないスポーツですけど、その中でオランダは飛び抜けています。
女子オランダ代表はすごく強くて、どの国も勝てない。ヨーロッパがすごく力があってアジアは低迷している状況です。

ホッケーもワールドカップやオリンピックも出場していますが、結果が残らないので注目を浴びることができない。今年のアジア大会でも、いろんな競技でメダルラッシュだったので、ホッケーも男女で金メダルを獲得しましたが、ほとんどテレビにも取り上げてもらえませんでした。

競技人口自体は国内に3万人いますが、競技環境が地方にしかないんです。

大きな人口芝のコートと、水を撒くための施設、音がでるので騒音にならない場所、と要件をそろえると車じゃないといけない場所になります。そうしたら人の目に触れるっていうことがまずできない。

私たちのマイナーなスポーツからすると人の目に触れることがないスポーツが多いですが、特にホッケーはそうです。ただ、東京2020に向けて品川区・大田区に4面新しいコートができます。ホッケーの普及のためにも人の目に触れる場所にコートができるって言うことは絶対的に必要です。イベントでホッケーを体験すると楽しいと興味をもっていただくんですが、できる場所が限られています。

ーホッケーの競技人口を増やすためには競技できる場所を増やすことが重要ですか?

それに尽きると思います。どうやって人目に就くようにするかが重要ですね。
あとは指導者ですね。学校などホッケーを取り入れたいですけど、怪我をすることもあるので、指導者がいなければ厳しいです。

今は改良が進んでいて安全面を考慮したプラスチックのスティックとクッションボールを使い、室内でホッケーに近いものを体験してもらう取り組みを行っています。まずは触れてもらうことから始めて、学校のスポーツとかにも導入してもらえるような活動していきたいなとは思っています。

日本で指導してくためには資格が必要です。講習会を受講し講義を聴き実践し様々な知識を増やします。私も上級コーチの資格を取得しました。海外と比べホッケーの指導で生活することが難しいこともあり、指導者はなかなか増えません。

ー模索しながら取り組まれているとは思いますが、課題は多いですね・・・。

日本ホッケー協会はスポンサー費用が、ユースジュニアなどすべての世代に配給されているので潤っていると思います。ヨーロッパ遠征など、環境は良くなっています現状、遠征の個人負担金がなくなりました。
高校・大学生のころは1回の海外遠征10~20万円、国内合宿は3,4万支払っていたので、親にはとても迷惑をかけました。企業チーム時代個人負担金は企業サポートしてくれていました。

ー先程、競技環境でコートが地方にしか作れない騒音問題や芝とか土地の確保という形でお話がありましたが、ヨーロッパも同様に都市には作りづらい環境ですか?

例えばオランダではひとつの公園にコートが8面あります。地方にあるんですけど、盛んなので人が集まってお酒飲みながら見てますよね。
また、オランダはプロ契約があります。日本人も1名プロとして活動していますね。プロとして生活ができるぐらいはちゃんと成り立ってるんですね。今はインドも男子ホッケー人気で億円プレーヤーも出るくらい盛り上がっていますよ。

ーどうやって協会が収益面で自走するか。潤えば自然とその競技者も集まってくるでしょうし、競技を続けたいと集まってくると思うので、その課題を聴きながら「なるほど悩ましいな」と思いました。

復帰にあたって指導者ではなくて「選手としてホッケーを広めたい」。それが最後の自分の責任かなと思ったので復帰を決めました。結果が何よりもの普及につながると思っています。
でもホッケーをやる場所がなければ、ただ見て終わりなんですよね。
ですから、環境作りが大切だと思います。「日本にはフィールドホッケーがある」ということを知ってもらいたいので、東京オリンピックが重要なんですね。

ご本人提供

スポーツは生活の一部

ー日本におけるスポーツの価値はどう感じていますか?

日本におけるスポーツの価値はものすごく低いと感じます。日本は休まない国ですし、趣味にスポーツですっていう人もまだ少ない。スポーツの価値を上げることから始めるのが一番大事なのかなとは最近考えています。「体育じゃないんだよ」っていうこと。
生活の一部として普通の一般の人も体を動かすことの大切さを根付かせるっていうのが大事だなって思います。

ー個人的には今のお話はすごく嬉しくて、当社の経営理念「スポーツの可能性を様々なフィールドで発揮」の通り、当社もスポーツの可能性や価値を高める取り組みであればそれが収益事業でもそうじゃない社会貢献に寄った取り組みでも、何でもやろうということを社是として掲げている会社なのですごく刺さります。

私は子どもの頃にいろいろなものに触れる機会を増やしてあげれば、子供の可能性がもっと広がると思います。海外へ行くとウィンタースポーツ、サマースポーツと2種類やっているじゃないですか?

日本も四季を活かして、多くの人がスポーツの面白さや楽しさを見出していってくれたら良いと思いますね。勝ちにこだわり続けて基本的にスポーツを「楽しむ」ことを忘れている人が多くいると感じています。自分も含め日本は「楽しむ」ことが足りていないのかもしれません。

ーそうですね。残りわずかですがもう少しだけ質問をさせていただきます。弊社はデュアルキャリア(スポーツと仕事の両立)の支援事業を始めたのですが、自分の中では一つ疑問があって、いたずらに選手の寿命を延ばしてあげることが幸せなのか。一部の生計を立てられるレベルの選手以外は早期に引退して社会人生活をリスタートした方がその人のタメになるんじゃないかという問いも自分の中で少し持っていて、小野さんはどういう風に考えられますか。

私は現役を辞めずにいますが、早くに辞めてしまった人もいます。違う可能性を切り開くことも素敵なことですし、続けていくことで自分の可能性をさらに見つめることも大事なことだと思うのでどっちがいいとかは一概には言えないです。

私の場合、多くの方々に背中を押していただき選手を再開するという決意をすることになりました。そして選手として夢を追えるチャンスが訪れました。一人ではこの決断には至っていませんし、多くの方々に出会えたからこそでた答えです。

たくさんの人と出会いいろいろと話をするなかで、「自分には他の可能性もあるんだ」と気づくことができます。知らなければ目に見えている選択しか不安でできないですから。
選手だけが全てじゃないと私も思っているので、「他の選択肢があるんだよ」ということを自分自身で気づきそして、自分自身で歩むべき道をいくつかの可能性の中から選択できるようになることが理想なのかもしれません。

ーそういった方々をもっともっとご支援したいですね。

最近はSNSで「アスリートを応援します」という投稿が増えているので学生とか見ていると思います 。どんどんデュアルキャリアを実践する選手が増えてほしいなって思います。少しでも長く現役生活を過ごしてもらいたいですから。

ー熱心にスポーツに取り組む人を増やし続けたいですよね。やめた後も「ビジネスにおけるパフォーマンスとか健康状態とか物心で幸福を感じることできる」とか「多面的にすごく人生充実しているよ」みたいな話を証明したい。それこそスポーツの価値だと思っているので、今後もこういった活動を行っていきます。