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自分のキャリアを考えたキッカケは戦力外通告だった ~元Jリーガー 宮内 龍汰~

GUEST:宮内 龍汰(みやうち りゅうた)

元J リーガー。鹿島アントラーズに所属し、2012-2014まで所属。競技引退後、2015年、法政大学キャリアデザイン学部へ入学。
現在は、株式会社CyberE(サイバーエージェントグループ)にてeスポーツの価値向上に向けて普及イベントなどを手掛ける。

※本記事はnote移行前の旧SPODGEから2021年6月11日に掲載した記事になります。



キャリアの選択を広げるために大学へ入学

ーこの度はインタビューをお受けいただきありがとうございます。やはり、アスリートのキャリアにご興味があってご協力をいただいたのでしょうか?
 
そうですね。
私はもともとJリーガーとして活動していたので、アスリートのキャリア支援などに興味を持っていました。

ー競技引退後に大学へ進学されましましたが、進学の理由を教えていただけますか?

過去を振り返ればサッカーしかやってきていないと感じていて、もっと幅広い考えや選択肢を持つために法政大学へ進学しました。

行き当たりばったり進んでしまってはいけないということを意識しており、
行き当たりばったりでは、キャリアの軸が作れないので、しっかりと決断しないと自分自身に負荷をかけられない後悔する人生になると思い、決断するための材料集めをするために大学進学する決断をしました。

法政大学キャリアデザイン学部へ入学し、田中研之輔教授のゼミに入りました。田中教授がリアルな社会人生活をうまく結びつけてくれたので、一人の社会人としてどうあるべきかを学ぶことができました。
貴重な経験ができたと思っています。

ー宮内さんが大学やゼミを選ぶ際に、決め手となったことは何でしょうか? 

社会とつながり、リアルな社会人の声を聞く機会が多い環境がいいと考えました。

私が田中教授のゼミへ入ることができたのは、私と同じようにアスリートを引退し、法政大学で学んだ先輩がいたからです。こういった環境があったことも田中教授のもとで学ぼうと考えた決め手になります。

ー社会と繋がり、距離を縮めることはどの年代でも必要なことだと感じています。そして、なるべく若い年代から始めることが重要だと考えています。親子ともにキャリア教育の機会を設けることが必要かと思いますが、宮内さんはどのようにお考えでしょうか? 

親の考えというのは、キャリア教育をする中で重要なことだと思います。子どもの考え方に大きく影響するからです。

私は親から自由に育てられたと思っています。
三男という立場もあると思いますが、いろいろな興味を持ち、チャレンジさせてもらう環境を用意してもらいました。プロサッカー選手を目指すようになったのも親の影響だと思います。サッカーと出会い、応援し続けてくれた環境がありましたから。

個人の育つ環境に依存しますが、子どもの視野が広がるような教育がキャリア教育の一歩かもしれませんね。

考えを変えた戦力外通告

ー少し話題を変えますが、サッカー選手を目指したのは親の影響と伺いました。現役を引退される時はどのような想いだったのでしょうか?

感謝と申し訳ないという気持ちです。これまでサッカーに取り組むことができたのは親の協力があったからですが、プロ選手としては3年で戦力外通告になり、恩返しができなかったという想いが最初に浮かびました。

ー今はビジネスのフィールドに変わりました。家族への感謝はお伝えできていますか? 

まだまだだと思っています。今は自分のことで精一杯ですから。

サッカーでの恩返しはわかりやすいかと思います。試合に出場することや、勝利することが恩返しだと思います。一方、ビジネスでの恩返しは金銭的なことなのかと思っていて、どのような恩返しが喜ばれるのか考えている途中ですね。

ーなるほど。過去を振り返れば、たくさんのターニングポイントがあったと思います。キャリアについて考えるようになったきっかけは何があったのでしょうか?

戦力外通告を受けた時が一番のターニングポイントかもしれません。

サッカー選手だけで生きていくと考えていましたが、戦力外通告を受けた時に、今後のキャリアをどう作っていけばいいのか。また、自分の中でキャリアの軸を考えることがありませんでした。サッカーだけで行き当たりばったりの人生だと感じました。

大学へ進学し、キャリアの軸をつくり、サイバーエージェントへ入社できたという流れは戦力外通告を受けたからこそできたと思います。

ー選手にとって厳しい一報が、自分の新しい人生を開くきっかけになったのですね。宮内さんがモデルケースとなることで、プロ選手から大学へ進学する選手が増えそうですね。

増えるといいですね。

そして、私のようなモデルケースを知ってもらい、また、キャリアをサポートする環境がより充実すれば、高校からプロを目指す人が増えると思いますし、プロの道を辞めて人も、あとで大学進学する人が増えていくと思います。

あくまでも個人的な意見ですが、高校からプロになれる選手が、後々の人生を考えて大学へ進学することがありますが、少しもったいないなと感じていました。

目指す目標が手に入るチャンスがあるときは、その時に取らないと二度とチャンスがやってこないと思っています。

写真:ご本人提供

目の前の目標に向けてやり抜く

ーそうすると、キャリアをサポートする環境の重要性が増しますね。具体的にどのようなサポートができると思いますか?

私が経験したことをもとに、マインドスタンス(考え方)は伝えられると考えています。私しか経験してないことや、考えを共有することで決断するときの判断材料にしていただければと思います。

スポーツに取り組んできた人は、ヒューマンスキル(人間関係を円滑にし、人との繋がりを最大限に活用する「対人関係能力」)、マインドスタンス(考え方)を培っていると感じています。

加えて、『GRIT』と呼ばれる力を持っていると思います。

GRIT(グリット)とは「やり抜く力」のことです。
・Guts(ガッツ):困難に立ち向かう「闘志」
・Resilience(レジリエンス):失敗してもあきらめずに続ける「粘り強さ」
・Initiative(イニシアチブ):自らが目標を定め取り組む「自発」
・Tenacity(テナシティ):最後までやり遂げる「執念」

この力はスポーツ選手の価値そのものだと思います。

ーGRITはビジネスシーンでも必要な力ですよね。

必要だと思います。

ただ、スポーツをやっていれば自然とGRITが身につくと言われますが、プロとアマチュアで比較をするとレベルの差があると思っています。プロ選手になるまでのプロセスには計り知れない努力があると感じているからです。

振り返れば、私はこのGRITの考え方が弱かったかもしれません。プロ選手としてお金を貰っているという感覚が弱かったかと思います。仕事としてやっている感覚が欠けていたと感じています。

だからこそ、私の考え方は、今を一生懸命頑張るアスリートの参考になるのではと考えています。

ー最後に、スポーツを頑張る学生やアスリートへメッセージをお願いいたします。

目標に向けて取り組む中でたくさん悩みがあると思います。特に学生は迷うことが多い時期だと思います。
今後のことを考えすぎて一歩踏み出すことに躊躇してしまうかもしれません。損得で選んでしまうかもしれません。

でも、その時は将来のことは深く考えすぎず、今やりたいことに一生懸命に取り組んで欲しいと思います。ワクワクする方を選んで欲しいです。そして、その選択に責任を持って取り組んで欲しいと思います。

私はプロサッカー選手を目指すために24時間ずっとサッカーのことを考えていました。
その先のキャリアについてはプロになってからでも考えることができると思います。今の目標に向かって全力を尽くしてください。


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