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全ての人の可能性を追求するために。~星槎大学共生科学部学部長 渋谷聡~

GUEST:渋谷 聡(しぶや さとし)

星槎大学共生科学部 学部長
専門分野:スポーツ心理学、陸上競技、指導法、教材開発
中学時代に110mハードルで全国1位を経験


通信制で教員免許状が取得できる星槎大学。「人と人との共生」をテーマにスポーツ身体表現など、様々なカリキュラムを受けることができます。
今回は、星槎大学の学部長を務める渋谷教授に、通信制における保健体育の免許状取得について、スポーツが持つ力についてお話を伺いました。

※本記事はnote移行前の旧SPODGEで2022年9月12日に掲載した記事になります。


通信制大学として


ー星槎大学は教員免許状が取得できる大学です。通信制で唯一、保健体育の免許状も取得できると伺いました。どのような免許状を取得できるのでしょうか?

星槎大学・大学院を合わせて、教職に関係する全ての学校種の教員免許状を取得することができます。

保健体育の教員免許状が取得できるようになったのは2013年4月からですので、スタートして10年が経ちますが、今でも希望者が続いております。特に直近3年間では、年間800名ほどの在学生がいらっしゃいますね。

ー新型コロナウイルスの影響で大学へ登校できない学生が多くいらっしゃいました。通信制の貴学では影響が少なかったのではないでしょうか?

本学では、コロナが流行する約2年前から徐々にZoomを使い始めていたので、他大学に比べて影響は少なかったかもしれません。

通信システムをZoomへ移行している中、コロナ感染が拡大しました。もともと通信制ですし、システム移行もありましたので、学生や教員の理解は早く、迅速に対応出来たのではないでしょうか。
また、本学の教育理念には「常に新たな道を切り開く」とありますので、社会が求めることに合わせた取り組みに力を入れています。
教職員の人数が少ないので、フットワーク軽く行動し、常に社会のニーズに応えるために何ができるかを考えているので、早い対応が実現できたと思います。

ー貴学のお知らせを見ると、社会問題の解決に取り組んでいると思います。

2018年問題(大学の定員割れによる経営難)や2025年問題(高齢化が進行し、日本人の2割近くが75歳以上になる問題)によって、学生が大幅に減ってしまう問題があります。

この課題の対策を考えていくために様々な企業や団体へ働きかけを行っています。
全国の大学をはじめ、教育機関とパートナーとしてお互いに足りないものを補うような教育連携の取り組みも積極的に行っていることの1つです。学生のニーズに応えるために星槎大学としてできることを考え、連携内容もその都度変更しています。その結果、他大学や専門学校と併修して、教員免許状を取得する方が年々増え、社会でたくさんの方が活躍してくれていますので、嬉しく思っています。


新しい専攻の立ち上げ


ー渋谷教授が星槎大学で教員として活動することになった経緯を教えてください。

大学院を卒業後、大学教員を目指し、様々な仕事をしていたときに、知人から星槎大学を紹介いただきました。

通信制大学として、日本唯一保健体育の免許状を取得できる専攻を立ち上げることを聞き、非常に興味を持ちました。
また、自分ができることがあればチャレンジしたいと思いましたし、新しいものを立ち上げて、様々なことを考えられるということにやりがいを感じました。

2013年1月末に保健体育免許状取得の認可が文科省から降りた翌月から星槎大学で働き始めました。
認可は降りたものの、どのように取り組んでいくのか、実際の管理・運用の準備で2か月かかりました。この時期は大変でしたね(笑)

ただ、それ以上に人の繋がりができましたし、何とかしなければいけないという思いで取り組んでいました。

星槎大学は(大学院含め)教職に関する全ての学校種の免許状を取得することができるので、教員も様々な知見を持っています。様々な分野の先生方とコミュニケーションを取るなかで「これはスポーツに関係することだな」といった刺激をもらっています。

コロナ禍になり、コミュニケーションを図ることが減りましたが、理念や同じ志を持つ教員が多いので、学校の雰囲気は良いと思います。

写真提供:星槎大学

スポーツこそ、共生を感じられるもの


ー渋谷教授はインクルーシブスポーツにも取り組まれております。インクルーシブスポーツに興味を持ったきっかけはあったのでしょうか?

まず、インクルーシブスポーツとは、年齢、性別、国籍、障がいの有無等を問わず、人々の多様な在り方や適正にあったスポーツです。

私は、中学時代に陸上110mハードルで日本一になったこともあり、陸上競技を通して勝つ喜びやできないことができるようになった達成感を経験してきました。
この経験を生かし陸上の指導者として、小学生を対象に陸上教室を開催した時のことでした。
参加した子どもの中に、列の横入りや落ち着きのないADHD(注意欠如・多動性障害)の子がいらっしゃいました。

スポーツが好きで参加しているイベントなのに、注意されたり、叱られたりしたら、楽しくありません。彼らを楽しませるにはどうすればいいかを考えはじめたのがインクルーシブスポーツに興味を持ったきっかけです。

オリンピック等を目指し競技力を高める「競技スポーツ」と、健康やスポーツを楽しむために取り組む「生涯スポーツ」があると考えた時に、誰でも取り組めて、楽しむことと、勝利を優先することに大きな隔たりがあると感じました。

インクルーシブスポーツの特徴は、全員が同じことをするのではなく、参加者のニーズを踏まえて身体的な特徴や状況に合わせて集まる人でスポーツを楽しむことです。

例えば、バレーボールの場合、あまり運動をしていない人やバレーボールがあまり得意でない人でも楽しくラリーを続けたいという時に、「ワンバウンドOK」や「ボールをキャッチしてもOK」といったルール、コートの広さやネットの高さ、ボールの柔らかさ等の異なるカテゴリーを作り、自分ができる、楽しめるカテゴリーでプレーをします。

各々が楽しめる環境を整えることがインクルーシブスポーツであり、共生に通ずるものがあると思います。

ー貴学は「共生社会の実現」を掲げられていますが、渋谷教授が考える共生社会のためのスポーツとはどのようなものでしょうか?

スポーツを通して、色々な関わりや学びを得ることができることだと思います。

私が思うに、礼をしたり、握手をしたりという行動は相手を尊重しているからできることだと思います。

スポーツは言葉がわからなくても、ルールを理解していれば取り組むことができますし、お互いを尊重し合いながら楽しみ、お互いを認め合うことができるものだと思います。


スポーツの経験を自分の力に変換する


ー最後に、学生へ伝えたいことはありますか?

本学ではSCP(セカンドキャリアプロジェクト)を2012年から始めました。セカンドキャリアやデュアルキャリアといった、実践しているスポーツや芸術等のその先のキャリアを考えながら取り組めるプロジェクトです。

2012年以前から「スポーツ経験を活かせる場所がない」という課題がありました。当時は、保健体育の免許状は取得できませんでしたが、公民や小学校教員などの教員免許状は取得できました。このプロジェクトの第一号卒業生として、元プロ野球選手が教員となり活躍しております。今後は、スポーツだけではなく芸術等の分野にも広げたいと考えています。

本学は運動部での指導を目指し、免許状を取る方がいらっしゃいます。
でも、免許状取得は目標であって、「教員になり、何を叶えたいのか」という目的を明確にすることが重要なことです。

星槎大学はスポーツで学んだことを単位化でき、卒業資格や免許状を取得できます。
スポーツから学んだことは何か、それが「共生」というテーマにどうつながるかを現場で学び続けることができます。
そして、スポーツで得た経験に理論などの考えを上乗せし、説得力を持たせて未来の生徒に伝えられることこそ、大切なことだと思います。

スポーツでの経験を自分の力にし、活躍する人財が増えてほしいと思っています。


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