見出し画像

夢を叶えるチームを目指して。 ~徳島インディゴソックス球団代表 谷田成吾~

GUEST:谷田成吾(やだ せいご)

写真:ご本人提供

元野球選手。四国アイランドリーグ・徳島インディゴソックスの取締役兼球団代表を務める。
高校、大学、社会人と活躍し、MLBのトライアウトへ参加する。惜しくも契約に至らなかったが、帰国後、徳島インディゴソックスからオファーを受け、2018年5月に入団したが11月に現役引退とともに退団。
選手引退後はIT企業に勤務するも、2019年12月より四国アイランドリーグ・徳島インディゴソックスの経営スタッフとして徳島球団に復帰した。

経歴
慶應義塾高等学校
慶應義塾大学
JX-ENEOS
徳島インディゴソックス


高校、大学、社会人野球で活躍し、プロ野球選手を目指し様々なチャレンジをしてきた谷田さん。一般就職をするも、徳島インディゴソックスを支えるために球団に経営の代表として復帰しました。谷田さんの野球に対する想いや、徳島インディゴソックスの今後についてお話を伺いました。

※本記事はnote移行前の旧SPODGEで2022年3月25日に掲載した記事になります。


野球人としてできることを探した現役時代


―プロ野球を目指すものの惜しくも叶わず、社会人で野球を行う決断をしました。プロ野球選手とアマチュア選手の違いはどのようにお考えですか?

大学野球、プロ野球、社会人野球について、選手目線で考えるといずれも異なると考えています。

まず、プロ野球は野球をしてお金を貰うことができます。一方、大学野球はお金(学費や部費)を支払って取り組みます。最後に、社会人野球は仕事の一環として会社のために野球に取り組みます。

「野球をする」といっても、各カテゴリーで背景や取り組む目的が変わるため、選手のモチベーションが変わると思います。

個人的には、大学まで楽しく野球に取り組めていたと思いますが、プロや社会人は結果が伴うので、楽しいだけではできないと感じていました。特に、負けたときは悔しい気持ちにプラスして仕事が果たせなかった申し訳なさのような気持ちを持っていました。

写真:ご本人提供

―各カテゴリーでの野球を経験している谷田さんですが、社会人野球でプレー後にMLB(メジャーリーグベースボール)にチャレンジした理由を教えていただけますか?

理由は2点あります。

1点目はプロ野球(野球でご飯が食べられる人)選手を目指すためにMLBへチャレンジしました。
社会人野球選手として最善を尽くしていましたが、自分の「NPBに行きたいという」想いとチームの「必ず勝たなければならない」という環境が必ずしも良い方向に一致しないこともあり、自分の目標のためには新しい環境でチャレンジする事も良い機会だと思ったからです。

もう1点は、プロ野球選手になれなければ、25歳までに野球を引退しようと考えていたからです。元々、NPB選手として活躍しながら経営者になるという目標を持っていたので、まず、第一の目標であるNPB選手を目指し、もし叶わなければ経営者になる道を25歳から目指そうと思いました。

世界を見渡すと、スポーツもビジネスも一流である本田圭佑さんのように活躍するアスリートがいます。どちらも一流として活躍する方に憧れを持っていました。プロの選手として活動しながら、株主や経営者など他にも活躍する場があると考えていました。

―少し話が逸れますが、スポーツと仕事で一流になることを目指したのでしょうか? 

私はスポーツを観ることが好きな方や応援している方など、多くの方の日々の生活を豊かにすることにスポーツの価値があると思っています。

チームや選手を応援してくれる方々のことを理解せずにプレーをすることはもったいないと感じていました。
選手は「自分はプロアスリートとして何を求められているのか」を感じながら競技に取り組む方が、自身の価値をより理解できるようになると思いますし、高等なプレーだけでなく勇気や感動など、周囲に与えられる影響も大きくなると考えています。


「球団を支えたい」。代表を務めるまでの道のり


―選手として大きく成長するために必要なことだと思います。話を戻しますが、徳島インディゴソックスへの入団はどのような経緯があったのでしょうか? 

MLBでの契約が叶わなかった後、アメリカの独立リーグでは合格をもらっていたのですが、ビザの関係で入団できる期間が短くなることが予想されました。であれば、ラストシーズンとして取り組むのは日本の独立リーグの方がいいと考えました。

2018年にインディゴソックスからオファーを受け、2018年5月に入団しました。

自分の中ではNPB(日本プロ野球)へ行けなければ「引退」を考えていました。5月から1シーズンインディゴソックスで過ごす中、徳島球団は私のことをNPBへ売り込みをしてくれたのですが、結果的に声が掛からず引退を決意しました。

写真:ご本人提供

―選手引退後、一般就職をしました。その後、インディゴソックスへ経営スタッフとして復帰しました。どのような決め手があったのでしょうか? 

インディゴソックスオーナーと将来について話したときに、「実際に球団に戻って取り組んでくれないか」と言われたことがキッカケです。
一般企業へ入社し、1年が経つ頃でした。入社1年で退職することは会社にも迷惑がかかってしまうと考えていましたが、前職の上司や社長が「挑戦したい想いがあるなら行ってきなさい」と背中を押してくれました。

私の野球人生を締めくくらせてくれたのはインディゴソックスです。球団が長く続いてほしいという想いで決意しました。経営が苦しい状況ではありますが、自分が入社することで少しでも良い方向(黒字化)にしたいと考えました。

―『球団の代表』という形で再度野球に携わることができたと思います。率直な感想を教えてください。

徳島の多くの野球好きや、インディゴソックスを応援してくれるファンの想いに支えられていると感じます。
選手たちと夢を見れることが素直に嬉しいです。

経営を行うことは未経験でしたが、幅広く様々なことに携わることができています。経営面だけでなく、SNS管理や動画撮影も私が行っています。コラボ企画を考えるなど何でもやっていますね。日々楽しく過ごせていますね。

―入団した1年目にコロナウイルスにより試合観戦の収益が無いなど苦しい時期を迎えたと思います。その中でもスポンサー収入が15%アップしたというニュースを拝見しました。行った取り組みの背景を教えていただけますか?

コロナウイルスの影響によってお客さんが今までの1/4まで減りました。苦しい時期を過ごしましたね。
スポンサー収入については15%アップすることが出来ましたが、球団全員で地道な営業活動を行った成果だと思います。
SNSやYouTubeなどオンラインでの発信に注力したことも効果がありました。

独立リーグはチームがある地域の発信媒体になれると思っています。インディゴソックスは徳島との関係が深く、地域の魅力発信の面で力になれるのではと思いました。


徳島インディゴソックスは夢を叶える場所


―徳島インディゴソックスはどのようなチームだと感じていますか? 

「多くの人の夢を叶える場所」になっているチームだと思います。

独立リーグは、文字通り独立したリーグですので、チームの昇格等はありません。そうなるとチームではなく、ビックリーグであるNPBを目指す各選手を応援しているという方々も多いです。そんな人達に少しでもインディゴソックス球団ファンになってもらうことを目指しています。また、チームとしての価値を高めるために、私たちはリーグ優勝に加え、NPBへ選手を輩出するという方向でも全力で取り組んでいるチームです。

写真:ご本人提供

インディゴソックスを通して夢を叶えている選手や、その夢を応援してくれる人がいます。
スポーツを通じて、若手選手や将来を担う子ども達が全力で夢を追うことができる環境を整えていきたいと思っています。

また、私たちは献血やゴミ拾いといった活動も積極的に行っています。社会人としての見本になるべく選手が取り組みます。普段応援している選手が取り組む姿に「自分もやろう!」と感じてくれるファンの方も多いようです。

スポーツの魅力は感動を与えることや人を育てることもできますし、人を巻き込む力があると強く感じています。

―谷田さんが目指す徳島インディゴソックスはどのようなチームでしょうか? 

地域に根付きながらずっと続く球団にしたいです。そのために多くの人が関わりたいと思ってくれる球団になりたいと思います。そして、多くの人の夢を叶えるチームになりたいです。

徳島を中心に、色々な方の生活に溶け込めるようなチームにしたいと思います。

―谷田さんは惜しくもプロになれませんでしたが、球団の代表という違う形で野球界に携わることができました。率直な想いや感想は?

本当に多くの方に支えられているなと感じます。
また、自分も目指したNPBと言う目標をひたむきに追う選手たちと夢を見れることが素直に嬉しいです。

日々楽しく過ごせています。


スポーツは人々の生活を豊かにするもの


―最後に、谷田さんが想うスポーツの価値/可能性を教えてください。

コロナ情勢になり、スポーツ観戦はいち早く中止や延期となりました。
ここからもわかるように、スポーツは娯楽であり、なくても社会は進む事もできるのです。それでも、多くの人たちがスポーツを必要としています。理由はスポーツには人々の生活を豊かにする、夢を与える力があるからではないでしょうか。「人々の生活に彩を加える。」そこにスポーツの価値があります。

写真:ご本人提供

オリンピックの盛り上がりを見てもスポーツは多くの人に希望を与えられると感じました。スポーツを通じた社会課題の解決事例も増えていますし、スポーツの可能性は無限大であると考えています。