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サッカー界師弟対談 松田保×元Jリーガー近藤岳登スペシャル対談!~教育=共に生きる=共育~

GUEST:松田 保(まつだ たもつ)(以下:松田)
小野伸二選手や稲本潤一選手など、日本サッカー史に残る「黄金世代」を擁した元サッカーU-17日本代表監督。学校法人ヴォーリズ学園副学園長。
近藤岳登さんの大学時代の恩師。

GUEST:近藤 岳登(こんどう がくと)(以下:近藤)
元Jリーガーでサッカー解説者、指導者、タレント。

※本記事はnote移行前の旧SPODGEから2020年11月17日に掲載した記事になります。


お互いが成長すること「教育=共育」

―松田先生、お久しぶりです。そして近藤さん、よろしくお願いいたします!松田先生と近藤さんは大学で監督・選手として師弟関係でいらっしゃいますよね?今日はお二人の話をお聞きできればと思っています。

近藤:知ってますか?松田先生は、僕のことを「ゴミ箱の中からダイヤモンドの原石を拾った」と言っていたらしいです(笑)

松田:岳登はすでに光っていたわけだ。光るものがあるなら活かすしかない。どう磨くかを考えたね。

―冒頭から凄い話ですね!松田先生は今までにたくさんの学生と出会ってきたと思いますが、出会った教え子のどの部分を見ていらっしゃるのですか?

松田:私の場合は長所を見ているかな。原石が持つ光=長所だからね。それをどう磨くかは本人と指導者との出会い、選手との友情ですよね。

近藤:僕は松田先生に対して反発的な態度をとっていたにも関わらず、試合に出場させてくれていましたよね。自分の考えや意見を無視する選手は試合へ出さないとか考えないんですか?

松田:私の仕事「コーチング」は人の長所を生かして、「どのように人間的に成長させるか」や「良いチームを作るには」とか「勝負に勝つためにどうするか」を考えることがコーチングの仕事で、教育・育成みたいなもの。

若い頃はカチンと来たやつもそりゃいたよ。でも、一度も暴力をふるった事はない。だから選手から圧力をかけられようが、何をされようが堂々と対応する。
私の選択肢には、厳しい言葉の指導はあるけど暴力は無かったかな。

近藤:あの頃は毎日先生と喧嘩をしていましたね(笑)先生は覚えているかわからないけど、「シュートしたボールがポストに当たって跳ね返った時に、『ゴールに入るのか』、『自分のところへ戻ってくるのか』それとも『枠の外に出ていくのか』それがお前の人生だ。お前の生き方が悪いからボールがゴールに入らないんだ」と言われた時ときは、物凄い反抗して「そんなことで僕の人生を決めるなよ」と言ったのを覚えてますよ!

松田:こういう選手には応えなければいけないと思ったね。「精進とは何か」、「努力とは何か」の意味が分からないのであれば、気付くまで伝えなければいけないからね。神様は絶対に見ているから。ボールがポストに跳ね返ってゴールへ入る人と、外に跳ねる人の違いを伝えないといけない。

近藤:ある時「なぜこんなに毎日毎日言ってくるのだろう」と考えました。そして、考えれば考えるほど、僕のために伝えてくれていた言葉だと気付きました。これに気付いた時に僕の中でスイッチが入りましたね。

近藤:「先生の言うことを受け止める」ことで考え方や感じ方に変化が出ましたし、何よりサッカーのレベルも生き方も成長したと思います。近藤岳登を人間として成長させてくれたのは間違いなく松田先生です! 

松田:腐ってしまったら人間終わりだからね。だから岳登と競っていたんだよ。私の信念は教え子がサッカーを好きではなくなったら、私の負け。家庭の事情とか校則違反とかあるけど、全てを含めてコーチングだからね。

「勝った!」と思うときは、教え子や周りがサッカーを好きになって、人間的に成長したなと感じたとき。私の考えは「お前も成長するし、私も成長する」これが本当の意味の「共育」だと思っているから。

近藤:共に育つ=教育と仰ってましたね。

それこそ、僕がヴィッセル神戸へ入団するときに当時のヴィッセル神戸の社長へ「近藤岳登は大学時代、精神的ライバルだった」と伝えたと聞きました。それを聞いた時に、とんでもない人だなと思いましたよ。

あと、先生は覚えているかな。今でも忘れられないのが、先生に見に来ていただいたヴィッセル神戸の試合後に、僕に言った言葉です。

あの一言は忘れられないです。大学時代とは違ったポジションで出場したので、プレーのことを言われると思ったら、「岳登、私はお前に謝らなきゃいけないことがある。お前がそんなにクレバーな選手だと知らなかった。頭を使える選手だと私は気付いてやれなかった。もし私が大学時代に気付けていたら、もっとサッカー選手として成長することができたかもしれないし、もっと凄い選手になった可能性もあった、だから申し訳なかった」と僕に謝ったんです。

感動して言葉も出なかったですね。

反抗して、無視して、ふてくされる態度を取っていたのに、そうやって先生が考えていたことを聞くと感動したし、器の広さに驚きました。本気で教え子のことを考える人はこういう考え方になるんだなと思いました。僕もこの言葉で色々学んだし、新しいことに気付けました。

松田:チャンピオンになりたいと思っている人にしかできないことだよ。サッカーが大好きだから。一番になりたいと思っている選手だから、こちらも本気で対応しなければいけないと思っているからね。

一生懸命な選手は、自分と戦い、ライバルと戦い、私(指導者)との戦いでも揉まれてトップになれる。

近藤:チーム全体がチャンピオンになりたい、トップになりたいという意識がなかったらチャンピオンにはなれませんよね。

松田:ただ、スポーツは楽しむことが一番。楽しくなかったら意味がない。

近藤:先生仰ってましたね。「スポーツは、楽しむスポーツと、チャンピオンスポーツ(結果にこだわり一番を目指す)が大切」だと。

ちなみに、サッカーなどスポーツでも戦術があると思うけど、最強の戦術って何だと思います?

―最強の戦術ですか・・・

近藤:僕らも松田先生に一年生の時に合宿で聞かれた時に最強の戦術って何かを考えたけど、結局全部違うって先生が言うんですよ。

最強の戦術は「友情だ!」と先生から教えられました。ずっとサッカーをやってきたけど、確かにその通りだと思いましたね。だけど、そんなことをいう指導者はあまりいません。

サッカーの技術の前に良い人間関係を作れと。こういうことを大事にしろと教える指導でしたね。

―松田先生の講義は競技関係なく惹かれるものがありますね。卒業してから松田先生を慕う卒業生が多い理由がわかります。

松田:まぁ、昔は岳登と私は監督と選手の関係だったけど、これからは同じサッカーを愛する人間として「自分の方がサッカーに想いを懸けている」という戦いをしよう。

これもまた共育だな。

―教育とは共育であり、共に育つこと。多くの指導者に取っての金言だと思います。松田先生、近藤さん本日はお話をお聞かせいただきましてありがとうございました。