注目のスポーツ『モルック』について、モルック王子に聞いてみた。~モルック日本代表 河野靖信~
GUEST:河野 靖信(かわの やすただ)
BRIGHT PRODUCTION (https://bright-production.jp/ )所属
友人の誘いでモルックを始め、競技開始4ヶ月後に日本代表としてお笑いコンビ「さらば青春の光」の森田哲矢さんらと共に日本代表としてフランス出場世界大会に出場。
世界大会で結果を残せなかった悔しさから帰国後モルック活動団体を立ち上げ練習環境を整える。2020年オンライン世界大会で日本人として初優勝。日本モルック協会にスタッフとして入会し、モルックYouTuberとしても活動。モルックの普及活動を精力的に行うことから「モルック王子」とも呼ばれ、日本モルック界を代表する選手。
近年、人気が高まっているスポーツ『モルック』。誰でも簡単に取り組めるスポーツで、お笑い芸人が世界大会に挑戦するなど注目を集めている。
今回は日本代表として活躍し、モルック普及に努めるモルック王子こと河野さんにモルックの魅力やモルックを通じて学んだことをお聞きしました。
注目のスポーツ「モルック」とは
ー河野さん、よろしくお願いいたします。まず、モルックとはどのようなスポーツなのでしょうか?
モルック(Mölkky)とは、フィンランドのカレリア地方の伝統的なゲームを元に1996年に開発されたスポーツです。
「モルック」という木の棒を投げて「スキットル」というピンを倒し、倒れた内容によって得点が入ります。50点ピッタリになるまで得点した方が勝ちというシンプルな競技内容です。
道具も7,000円ほどで1セットが購入できます。
老若男女問わず誰もが一緒に楽しめるスポーツで、屋外で密にならずに気軽に遊べることもあり、コロナ禍において競技人口が増加しています。
ーモルックを始めたきっかけについて教えてください。
2019年4月に友人がきっかけとなり始めました。ちなみに、芸人の「さらば青春の光」の森田さんと同じタイミングです。
友人からモルックのルールなど細かな情報を聞きました。
私のイメージではボウリング、ビリヤード、ダーツを混ぜあわせたような気軽に出来るスポーツだと認識しました。一方で、どういう風に状況が変化していくのかイメージができませんでした。
早速、体験会に参加すると、イメージ通り簡単にプレーすることができましたが、一投で状況が変化します。それに伴い、攻防の駆け引きが始まります。簡単にできますが、実は奥がものすごく深いことにハマりました。
ー駆け引きとありますが、技などはあるのでしょうか?
モルックにも技があります。大きく分けると4つあります。
横にモルックを持ち下手で投げるのが「順手投げ」、ふわりとモルックを投げる「ふわり」、タテにモルックを投げる「タテ投げ」、そして手前のスキットル(倒す棒)だけを狙う「バックスピン」があります。
この投げ方で練習を重ねて、試合に臨んでいます。
モルックならではのポイント
ーサッカーや野球などのスポーツと比べ、モルックにはどのような特徴があるのでしょうか?
一般的なメジャーなスポーツと比べて、運の要素が高いことが特徴だと感じています。
試合会場は芝、土、砂利など、地面によって大きく環境が変わります。
また、狙っていないピンが倒れてしまったら点数が加点されてしまうため、イレギュラーな動きの中で点数が入ることが多いです。
ですから、ジャイアントキリングが起きやすく、初心者が大会で優勝することもしばしばありました。
ー日本でのモルック人口は増えているでしょうか?
増えています。一度モルックをやったことのある人は100人に1人いるようです。大会ではチーム数が増え、大きな大会だと300チーム、1,000人くらいが参加します。
体験会など積極的に開催していたり、モルックのメディア露出が増えたため、今、注目度の高いスポーツです。
ー河野さんはモルック普及を精力的に活動されています。
私はモルック協会に所属しています。モルックの講師として、イベントへの派遣や体験会、練習会で認知を広げています。
また、色々な選手と大会の企画運営をしていて、よりおもしろい大会を目指しています。最近は競技人口が増えてきたため、スキルや知識を中心とした内容も増やしました。
余談ですが、日本でのモルックコーチは私が最初だと思います。
ー国内の注目が高まっているとお話がありましたが、体験会にはどのくらいの人が集まるのでしょうか?
体験会の規模にもよるのですが、先日行われた川崎フロンターレのフィンランドにまつわるイベントでは300名くらいの方に体験いただきました。
練習会に参加いただく方もいらっしゃり、10〜20人の方が参加してくれます。
練習は広めの公園であればできるので、近場の方が参加してくれます。
ーところで、モルックには対戦相手にお土産を渡す文化があります。河野さんが国際大会でお渡しするお土産を教えてください。
日本にまつわる物をオリジナルで作成し、渡すことが多いです。
あるチームでは、モルック柄の扇子をオリジナルで作成しお土産としてお渡ししたとお聞きしました。
私は、個人スポンサーでもある「飲むあんこ」を海外選手へ配っています。手軽にエネルギー補給ができますし、日本らしさを感じていただける商品として、海外選手には特に喜んでいただいています。
ー2024年の世界大会は函館で開催される予定です。
これまで世界大会はヨーロッパで開催されてきました。
2024年は初の日本開催です。日本国内の競技人口が増えたから開催に至ったと思います。国内のモルックの注目度が高まる素晴らしい機会です。
そして、世界大会を盛り上げるための施策をしていきたいです。
選手としても世界一になるという目標があります。優勝して今後のモルック普及につなげていきたいです。
ー河野さんは仕事とモルックを両立されています。年間の活動費などどのくらいの費用が掛かるのでしょうか?
本業はシステムエンジニアの会社員として働いています。
このため、平日の夜や土日の大会やイベントに参加しています。活動費用はほとんど自費なので、仕事をしなければいけない環境です。
現在、全国で大会が行われるようになり、年間30以上の大会に出場しています。遠征費は150万円ほどかかっている状況です。
多くの選手は本業で稼いだ費用で活動をしています。
全国に行くため、可能な限り遠征費用は抑えるようにしています。本当は新幹線や飛行機でいきたいところを、夜行バスを選択します。各選手がやりくりをして大会に参加していると思うので、苦労されている方も多いと思います。
でも、大会でみんなに会えると嬉しいですし、小旅行のような気持ちで楽しんでいます。
モルックを通じて叶えたいこと
ーモルックを通じて感じたスポーツへの想いはありますか?
仲間と目標を共有できて、一緒に頑張れる、熱くなれることが素晴らしいと感じました。
スポーツをしていなかったら感じることのできない感情だと思います。
また、モルックをはじめて色々な人と交流することができ、気づけば全国に友人ができました。
仕事だけでは広がらない交友関係です。人に支えられながら競技に取り組めることに感謝しています。
ー河野様が考えるスポーツの価値・可能性について
モルックは教育面に活用できると感じています。モルックを学校の授業や人事コンサルティング企業が研修として取り組んでいることもお聞きしました。
「楽しくチームビルディングができる」ものとして活躍の可能性があるとモルックが注目されているようです。相手より先に50点を獲得するというルールがあるため、戦略面の構築と計算力の向上にも寄与していると思います。
モルックは、仲間とともに楽しく勉強ができ、目標に向かって取り組める最高のスポーツです。
ー今後の目標を教えてください。
まず、選手としての目標は「世界大会で優勝すること」です。4人一組のチームで優勝することが一番の目標です。
普及活動としては、モルックの国内認知はまだまだ発展途上です。ですから、まずは認知拡大に努めていきたいです。また、プレーする以外でも、モルックを見て楽しめるようなレギュレーションを考え、プロリーグ発足などを進めていきたいです。将来的にはオリンピックのスポーツとして世界中でモルックが広がってほしいです。