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五輪メダリストの私だからこそ、次世代の競技者に対して伝えたいこと

GUEST:沖口 誠(おきぐち まこと)

体操選手。北京オリンピックに出場、男子団体競技で銀メダリストを獲得した。


現役元トップアスリートの方や、名指導者の方のインタビューの連載化が進んでいる本企画ですが、今回は北京オリンピック体操男子団体銀メダリスト、沖口さんにインタビューさせていただきました!
現役時代はもちろん、引退後も体操界を盛り上げるために、日々活動されている沖口さんですが、これから先の展望を含め、様々なお話をお聞かせいただきました。

※本記事はnote移行前の旧SPODGEで2018年10月17日に掲載した記事になります。


―沖口さんが考える「オリンピアンが大切にしたほうがいいこと」とはどのようなことでしょうか?

競技以外のことでしょうね。
オリンピアンは日々注目されています。インタビュー時の言動とかも。発言力が高いですし、そこで何を言うかは、競技レベルが上になればなるほど注目されます。子供たちに対してすごく影響力があるので、言葉一つひとつに響くものがありますよね。

だからこそ、襟を正して気を遣わないといけないと感じています。内村選手のルーティンは真似したり取り入れたりしますね。オリンピアンたるもの、競技や、人としての対応は、常に見本であるべきだと思います。
それはどの競技でも一緒だし、メディアの前に出るときは特に重要な気がしています。メディアに出る前以外では、常に体操のことばかり考えていました。どんな些細なことでも、次の日の体操の練習に響かないようにとか、練習がベストの状態でできるようにとか、常に注意していました。

―指導者としては、体操を通して伝えたいことはありますか?

体操を通して、関西に来たので、今の関西大学を強くし、広めたいです。

正直、現状は関東の方が強い大学か多いです。関西の体操をもっと盛り上げる為には強い大学が関西に必要だと感じています。
なぜなら、次年度の代表選考方法は全日本団体選手権で上位のクラブ、大学が会議で集まり、選考方針を話し合います。その会議に参加することにより最新の技術や傾向についての情報交換ができ、最新の情報を知る事ができるからです。
だからこそ、まず所属する大学を強くする必要があります。あとは、体操は対戦相手不在の個人競技なので、全部が自分次第です。他人を気にするのではなく、自分がどうあるべきかを大事にしている選手は、強くなれるし、人のことを拍手して褒めることができるのは素晴らしいです。ライバルでもみんなで応援して、高めあえる関係を作っていくべきですよね。そういうことは今後も継承していきたいです。

―他の人が演技を称賛することは、他競技では余り見られないことだと思います。素晴らしいことです。

北京オリンピックのときは、代表に選ばれていたんですけど、ロンドンオリンピックは本気で狙っていたにもかかわらず、出られなかったんです。その明確な違いは、ロンドンのときは、周りを気にしすぎていたんです。自分自身の演技に集中し切れなかったときは、拍手や周りに対する承認をする余裕がなかったんです。それが、メンバーに選ばれなかった要因だと思っています。

いい演技に対して自然と拍手ができるときは、自分の演技に集中できているときですし、逆に少しでも人のことが気になっているときは、もちろんすごいなとは思っているんですが、自分はどうしようと考えていることが多かったです。力んでいるようなことがありましたよね。そこが差だったと思います。

―今、指導を通して子供たちに伝えたいことはありますか?

まずは、楽しくないと意味がないということです。つまり、義務でスポーツをするのではなくて、「スポーツがしたい!」と思えることが重要です。指導する中で、できるようになる喜びや、成長したときの嬉しさを一緒に味わいたいし、伝えたいんです。できた!という機会が多いのが体操でもあるので、達成感を感じてほしいですよね。競技のレベルがどうこうということは考えずに。

―少し話題を変えますが、ビジネスマンに対して、プレッシャーを乗り越えるためにはどのようなアドバイスを行いますか?

私自身の経験を伝えると思います。最初、世界選手権出たときに、団体決勝がありまして。そのときはもうすごく緊張、プレッシャーを感じていましたね。決勝は、3人でやるので、失敗できない仕組みなんですよね(笑) ※オリンピックは5人 

―アテネで金メダルを獲得した日本代表が北京で負けたと言われるのは結構きついことだったんじゃないですか?

きついことだったかもしれないですね。日本の体操が負けたということになるので、それまで先輩方が作ってきた体操界全体を否定されたような気分になります。

そこで感じたのが、本当に決勝と予選との緊張感の差でした。 そのときは、先輩方が声をかけてくれて、多少緊張が和らいだのを覚えていますが、もうやるしかない。という状況でしたね。声をかけていただいたことで、緊張がほぐれて、ちゃんと演技することができたので、それはすごく助かりましたね。

誰かの言葉で、立ち直れる人もいるので、近くに緊張している、悩んでいる人がいたら、一言声をかけてあげたらいいと思います。

―日本代表として活躍するというのはどういう気持ちでしょうか?

先ほどお話したことと被りますけど、全ての人の模範になりますからね。そういった意味で国を代表しているし、演技を通して何かを伝えないといけない。個人より団体でどうあるべきか、6種目の中で自分はどれを強化していこうかというのを考えていました。最初はなかなかそう思えなかったですが、何回も選出いただいてからは、日本のためにどうしたらいいのかというのを考えるようになりました。

―大学でスポーツと就職活動を頑張る方へメッセージをお願いいたします。

スポーツが上手くなるかを考えて続けてきたということ自体が大切です。あとは、自分の経験をこれから先のことに置き換えて考える事ができればうまく変わってくるのかも知れないですね。

―沖口さんは将来に向けた進路選択を行う際はどんな基準に選択してきたんですか?

高校に進学するときは、強くなりたいという気持ちがあっただけなので、強い高校を選択しました。うまくなりたいという気持ちしかなかったですね。強い高校にいったら強くなると気づいていましたね。今は、相性とかあると思いますけど。自分の特徴や、スタイルがあって、それにあった選択をする必要があると思います。

―大学はどういう基準でしたか?

大学の選び方は、高校の先生が日体出身ということがあり、日体大を薦められたということは大きかったですね。そのとき日体強かったですし。
あとは、先生から言われたという事も大きかったですよね。自分のことをわかってくれている人に勧めてもらったので進学してみようと思いました。誰から言われるかは重要でしたし、あとは安心というのもありましたね。

また、自分が進む進路先に、先輩がいることは安心感につながりました。実際に自分が練習しているイメージを持てるかどうかというのがとても大切になってきますし、それをイメージできるのは、先輩がいるからだとは思います。

これから先どう自分の人生を選択するかという中ではさまざま考えていく必要があると思います。