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競技経験は関係ない。素人から世界の監督を目指して。~サッカー指導者、監督 木室孝輔~

GUEST:木室 孝輔(きむろ こうすけ)

東京外国語大学サッカー部監督。
競技(サッカー)未経験ながら指導者として活躍する。

◆指導歴
2016~2017年 大阪府立摂津高校
2017~2019年 大阪市立東高等学校
2019年 FC淡路島

◆指導者ライセンス
JFA(日本サッカー協会)公認C級ライセンス
FA(イングランドサッカー協会)License Level 1

※本記事はnote移行前の旧SPODGEから2021年10月29日に掲載した記事になります。



未経験という立場を活用する

ー木室さんは競技未経験ながら監督として活躍されております。サッカー監督を目指したきっかけを教えてください。

中学生の頃、テレビで見たサッカープレミアリーグ(イングランドのプロサッカー1部リーグで、欧州の5大プロサッカーリーグの一つ)の試合を見た時に監督の姿に、立ち姿、チームを鼓舞する姿勢がかっこよく見え、魅力を感じました。
当時、「ビッグになりたい!」という漠然とした夢がありましたが、プレミアリーグを見たことで監督になるという具体的な夢に変わりました。

私は幼稚園から水泳に取り組んでいました。中学時代は近畿大会に出場するなどできましたが、世界へ行くことは難しいと感じました。また、水泳を続けていた理由も友人と会えるためでした。

世界で活躍する人になるために、サッカー監督は年齢の制限はないですし、競技者よりも長く取り組めると思いました。

ー指導者を目指すにあたり、サッカーを経験しようとは考えなかったのでしょうか?

プレーヤーとして活動することは考えませんでした。サッカー未経験の指導者というブランディングをしようと考えていたからです。
高校からサッカー部に入るのであれば、敢えて未経験で指導者を目指すことで、私の見え方や周囲の食いつき方が違うと思っていました。

ー競技経験がない中で、競技に関する情報や知識のインプット、特にアウトプットは難しいと思います。

まず、インプットは先述を学ぶためにサッカーの試合を見ました。サッカー雑誌でプレー解説を読んだりと、目で見て頭でイメージしていました。高校3年からはサッカーのブログを書き始め、コメントでアドバイスをいただいたこともあります。

実際の現場でアウトプットを行ったのは大学生になり、指導現場に立ってからです。中学2年から現場に出るまでの5年間、頭に詰め込むだけ詰め込んだと思います。

乗り越えられない壁はない

ー知識や情報は得ることができたと思いますが、実際にプレーしなければいけないC級ライセンス取得時はどう乗り越えたのでしょうか?

ライセンス講習の時は苦労しましたね・・・(笑)サッカー経験者の中に未経験者がいるので、講習会のインストラクターも経験がないことはすぐに分かったと思います。

ただ、未経験の姿が目立ったことで、インストラクターの目に留まり、インストラクターの方が指導しているチームで、私に指導する機会をいただくことが出来ました。貴重な経験ができたと思います。

ー実際に指導を初めて5年が経ったと思います。これまで未経験に対し、厳しい意見などはあったのでしょうか? 

未経験に対して厳しい意見はありません。
個人的に、選手から「未経験のくせに」と選手に思わせてしまうことがいけないことだと思っています。選手に未経験と感じさせてしまっていること、チームとしての規律がない状態にしていることは、監督として私の責任でもあります。

経験、未経験問わず、勝つことで認められるし、負ければ、厳しい意見が来る世界ですから、未経験については気にしていません。

ー未経験で指導するとき苦労することはあるのでしょうか?

実際にプレーで見せることができないことや、選手特有の気持ちに気付くのが難しいことに少し苦労しています。

ただ、自分が考えるプレーなどがあれば、動画を見せています。
これは大学最後に所属していた社会人チームで実践したことです。練習前に動画を見せることで、頭でイメージして、グラウンドで実際に表現してもらっていました。

この取り組みは好評でした。動画を使用することで、私と選手間で自然とコミュニケーションが増えたと思います。

選手と共に成長し、トップを目指す

ー東京外語大の監督として指導されておりますが、就任のきっかけを教えてください。

東京外語大との出会いは知人に繋げていただきました。契約前、選手たちと話す機会をいただいたのですが、フィーリングが合いましたし、幸いにも外語大からの熱いオファーがありました。私も選手たちの熱量の高さに心惹かれてすぐに決断しました。

ー先ほど選手へ木室さんの存在ついてお話を伺ったところ、選手とは違う視点でサッカーを考えてくれるので、たくさん発見がありますと仰っていました。

実際に経験がないことはマイナスのイメージを持たれると思いますが、未経験だからこそできることがあると思います。
とても嬉しい言葉です。

ー選手とのコミュニケーションについて、選手を下の名前で呼んでいたことが印象的でした。

そうですね。基本的に名前で呼んでいます。これは意識してではなく、小さいころからのクセで、自然と呼んでいると思います。

私と選手は、年齢も近いこともあると思います。ただ、名前で呼ぶことで選手との距離が近くなっていると感じます。

ー実際に指導する際、選手への指導で意識していることはありますか?
難しい言葉を使わず、選手との共通言語を使います。専門的な用語は使わず、なるべく選手が理解しやすい言葉を選んでいます。

また、自分の指導を振り返るようにしています。私が行った指導はもしかしたら間違えている可能性があると考えていて、新しいトレーニングをするときは、動画を取って振り返りをしています。

5年間指導する中で、思い通りにできた練習は少ないと感じています。本当に正しい指導なのか、選手の意見も聞きながら、選手と共に成長したいと思っています。
だからこそ、選手との関係性を一番大切にしています。

ー現在、監督のほかにもお仕事をされていますが、どのようなお仕事をされているのでしょうか?また、仕事を両立する理由についても教えていただきたいです。

監督業のほかに、知人の企業でお手伝いのような形で働いています。アプリのテストやスーツの仕立てを行ったりと業務は様々です。空いている時間を有効活用しています。

監督業のほかに仕事を行っている理由については、私の性格上、広く物事を見て、経験したいということがスポーツと仕事の両立に繋がっています。

監督は物事を見ることが必要な仕事だと思っています。チームマネジメント、取材対応、スピーチ、文章作成力、コミュニケーション力といった幅広いスキルが必要になります。

サッカーだけでは食べていけないこともありますが、トップレベルにならなければ生活できないことは重々承知しています。少しでも早くトップ指導者になれるようトレーニングを積んでいる段階です。

1点、気を付けていることは、サッカー(監督業)に関係することなのかという軸を持っています。広く物事を捉え経験する事は大切ですが、目移りしてしまったり、興味を持たないよう注意しています。

プレミアリーグのピッチに監督して立つ

ー最後に、将来の夢・目標を教えていただけますか?

60歳までにプレミアリーグの監督に就くことが夢です。
その為に、38歳までにJ1(Jリーグ)の監督就任。30歳までにJFL(Jリーグ4部の位置づけ)の監督就任を目指しています。夢に向かって逆算し、目標を立てています。

ー木室さんの活躍が多くの方に勇気を与えると思います。

かっこよく言えば、サッカー未経験で指導者、分析をやりたいと思っている人のパイオニアになれればいいなと思っています。

ただ、自分がやりたいことをやっているだけなので、結果として、パイオニアのような存在になれれば嬉しいです。

ー未経験だけど新しいことにチャレンジすることに迷っている人がいたらどのような声を掛けますか?

「迷っているならやってみろ!」と言いたいです。チャレンジしてみて見えてくることがあると思います。もし、合わなかったり、ダメなのであれば、切り替えればいいだけです。
好きなこと、楽しいことであれば、長く続けることができると思います。

私はサッカーが大好きですし、監督も楽しいです。好きなことだから続いています。

もし、合わないと感じたり、辞めることになっても、次のステージも自信をもって進むことができると考えております。なぜなら、今取り組んでいる監督業は、別の環境でも活きてくると思いますし、私を成長させてくれていると思います。

何事も全力で取り組むことが大切だと思います。


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