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ピッチ外こそ、チームの力が見えてくる。関西学生サッカー連盟、西田裕之理事長。

GUEST:西田裕之

関西学生サッカー連盟理事長
北陽高校(現・関西大学北陽高校)コーチ
奈良産業大学監督
ユニバーシアード 福岡開催  コーチ(1995年優勝)
ユニバーシアード イタリア開催  コーチ(1997年)
ユニバーシアード 韓国開催  監督(2003年優勝)

※本記事はnote移行前の旧SPODGEから2020年3月17日に掲載した記事になります。



理事長に至るまで

―大学サッカーに関わるきっかけを教えて下さい。

奈良産業大学(現・奈良学園大学)の指導者を務めたことがはじまりです。私が大阪商業大学の出身ということもあり、当時の大阪商業大学のコーチから理事の話をいただいて、1987年から関西学生サッカー連盟をお手伝いさせていただくことになりました。

2003年、ユニバーシアード※の監督として優勝を経験させていただいたので、今度は他の人にも経験をしていただければという思いで、監督を退き、大学サッカーの発展・貢献のために2008年に理事長を引き受けました。

※ユニバーシアードとは:国際大学スポーツ連盟が主催する総合競技大会で、全世界の学生たちが集まり、一般に「学生のためのオリンピック」といわれています。

大学サッカー連盟として

―大学サッカー連盟として考えていることは?

大好きなサッカーが出来る環境(外側)を作ってあげたいと考えています。だからこそピッチ外(オフザピッチ)の活動を大切にして欲しいと考えています。

2010年の関西大学はとても印象的でした。インカレ優勝した時、選手の挨拶や応援団が駐車場までゴミ拾いをして帰ったことは有名な話です。日本一になるチームはピッチ外でも日本一だと思いましたね。あの時の関西大学は試合に出場している、していない関係なく、チーム全員が日本一の学生達でした。

―KCAA(一般社団法人大学スポーツコンソーシアムkansai)のシンポジウムの時にパネラーで、関西学院大学が4冠を獲った時の(2015年)主将である井筒さんも同じことを仰っていました。

あの時の関西学院大学も素敵でしたね。(リーグ戦、関西選手権、総理大臣杯、インカレ全て優勝)本当に強いチームには共通している点があります。選手、マネージャー、主務、応援団、全員に「関西学院」という誇りが根付いていることです。

逆に、優勝しても価値を下げてしまっている大学チームがあることも事実です。優勝は素晴らしいことですが・・・

写真:ご本人提供

連盟としての転機とこれまで

―「ビッチ外も大切」という考えになったことですが、きっかけはありましたか?

1993年、Jリーグ発足です。それまではサッカーが上手な高校生選手は、自然と大学に進学していました。

ところがJリーグができて、高校から直接プロへ進むようになり、トップレベルの選手が大学へ進学しない時期がありました。逆を言うと、大学サッカー界は「プロに行けない人の集まり」という風評も出てしまったんです。

1995年、ユニバーシアード(福岡大会)で初優勝しましたが、当時のメンバーはJリーグが出来る前なので、優秀な選手が大学へ進学していた世代でした。その後の1997年、1999年のユニバーシアードは決勝トーナメントにもいけなかった苦い経験をしました。これを機に、危機感を覚えた全日本大学サッカー連盟の技術委員会が「5年計画」など、様々な策を始めます。

また、Jリーグでは、高校から来た選手がすぐプロの試合に出られず、サッカー選手として伸び悩んでいました。プロ野球のような二軍の試合はJリーグにはなく、試合経験を積めず数年でクビになるケースが起きていました。そんな中で、高校時代は無名だった坪井慶介選手のように、大学からJリーグに行った選手たちが活躍しました。大学側が海外経験を積ませる施策などに力を入れ始めました。

加えて、Jリーグユースの選手たちが、大学に進学し4年間サッカーをして、またJリーグへという流れもできてきました。

このあたり(2000年前後)から大学サッカーへの評価が変わってきたと思います。

今は日本サッカー界を総合的に見るとJユース出身選手の出場機会が多いという傾向があると思いますが、一時期はあまり良くない評価もありました。技術的にはレベルが高い選手が多いですが、礼儀やマナーといった人間教育が厳しく指導されていないことがあり、評判を落としてしまうことが多かったんです。Jユースは「このままではいけない」と考え、人間育成のトレーニングを取り入れるチームが増えてきました。

大学サッカーとしては、Jユースから「プロ」に行った選手と、Jユースから「大学」へ進学し、プロになった選手の違いは何なのか?ということを考えるようになりました。行きついたのが、「intelligence(知性)」でした。

ただ遠征に行くだけではなく、国内外へ遠征を行う場合、その土地の文化や風土を学んで社会人としての知識や教養も身に着けようと取り組んできました。

インディペンデンス・リーグ(通称:Iリーグ)の存在も大きいです。Iリーグはレギュラーでは出場機会の少ない選手を中心とした公式戦です。他の競技ではなかなかないと思います。

関西のIリーグでいうと2003年は16チームでしたが、2019年は57チームの登録数になっています。Iリーグの全国大会が「フェスティバル」という名称であります。それに加えて社会人リーグにも登録できます。この取り組みは大学サッカーならではだと思います。

先人たちが創った環境を引き継いでいくこと

―連盟として、様々な取り組みを行っているんですね。

先人たちが連盟の内側だけではなく、連盟外の方との関係を大切にしてこられたおかげです。以前の連盟の方が良い環境を今に残していただけたからだと思っています。

前任の塩谷理事長(大阪産業大学)の功績を語らずに今の関西学生サッカー連盟はないといっても過言ではありません。関西学生サッカー連盟の功労者です。そして大阪商業大学の上田先生や、同志社大学の古川先生の存在は大きいです。今の組織を創っていただいた方々です。

上田先生は高校の指導者から非常に尊敬されています。サッカー経験のない高校指導者にも、分かりやすく丁寧に話をされておられたという話を良く耳にしました。「高校サッカーを強くしたのはサッカー未経験の先生だ」と仰っておられます。そして、日本サッカー協会にも意見を述べて来られました。「組織としてきちんとしなければいけない」という考え方が根底にあったからだと思います。

2003年、ユニバーシアードで優勝をさせて頂きましたが、はじめは私が監督として務まるのか不安でした。何も実績のない私が監督として優勝できたのは、瀧井先生(2001年ユニバーシアード監督)をはじめ、沢山の人に支えて頂いたからだと思っています。優秀なスタッフに最高のモチベーションビデオを作っていただけたり、選手も鹿島アントラーズに行って日本代表にもなった岩政選手中心に頑張ってくれました。

―西田理事長は感謝の気持ちを常にお持ちですね。松田保先生(元サッカーU-17日本代表監督、現ヴォーリス学園副学園長)も同じことをおっしゃられていましたが、「自分が」という指導者のチームはその時が良くても未来で伸びないことが多いと。

松田保先生インタビューURL:https://www.spodge.sports-f.co.jp/968/

「人間性を高めること」が育成

―西田理事長が考える育成とは何でしょうか?   

「誰かに見られているとかは関係なく行動できるか」が大切だと思っています。

写真:ご本人提供

上田先生の言葉をお借りすると「サッカー上達の最短方法は人間性の充実である」、「簡単な事に対して、地味に謙虚に黙々と努力することであり、決して派手なことや難しいことをすることではない」です。

この言葉は今でも大切にしています。

高校生の時にピシッと挨拶できていた子が大学では全然挨拶ができない子になっている時があります。それは「やらされている」挨拶をしているんですよね・・・

集団で挨拶が出来ても、一人になったら挨拶が出来ない。これでは意味がないと思います。

大学でも高校でも監督には挨拶するけど、他の先生に挨拶しないような子がいますがこれではダメです。身にはついていない。会社員でいうと、自分の上司には挨拶するけどそれ以外の人に挨拶しないようなものです。

サッカー関係者以外から「○○君は良い子ですね」という話を聞くと嬉しいですし、それこそが育成だと思います。そしてそれが本当の評判です。

この考えは、どんなスポーツでも一緒ではないかと思っています。

―元読売巨人軍でU12侍JAPANの監督をされている仁志敏久氏がインタビューの際に「良い子」の話は非常に印象的でした。現代の「良い子」は親の前で良い子が「良い子」、昔は親の目の届かないところで良い子が「良い子」と仰っておられました。

URL:https://www.spodge.sports-f.co.jp/936/

学生へのメッセージ

―サッカーを通して学生たちへお伝えしたいことはありますか?

サッカーを通して学んだことが、次の世界へ行っても活かして欲しいと思います。

忍耐力・我慢というか、他人が嫌がることを率先してやるなど、サッカーには多くの学びがあると思う。それを社会で活かして欲しい。

調子の良い時は誰でもやるし、誰でもできます。「しんどい時にどれだけできるか」それが評価ですし、社会に出ても大事だと思います。

就職活動もサッカーも両方頑張って欲しいと思います。やっぱり両方頑張った学生が、両方良い結果を手にすることができると思いますから。

―西田理事長、ありがとうございました。

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