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関西六大学野球優勝監督に聞く指導の極意。学生を「観て」背中を押すこと。~龍谷大学野球部監督 本郷宏樹~

GUEST:本郷宏樹(ほんごう ひろき)

龍谷大学野球部監督。
1999年から2005年までヤクルトスワローズで活躍後、指導者としての道を歩む。
2019年にコーチとして母校へ戻り、2020年に監督就任。
監督就任後、2年で14季ぶり関西六大学野球秋季リーグの優勝を果たした。
また、2021年11月に開催される第五十二回明治神宮野球大会へ関西地区第2代表として11年ぶりに出場を決めた。

【球歴】
比叡山高等学校
龍谷大学
ヤクルトスワローズ (1999-2005)

※本記事はnote移行前の旧SPODGEから2021年11月17日に掲載した記事になります。



14季ぶりの優勝を経て

ー関西六大学野球秋季リーグの優勝おめでとうございます。優勝した瞬間のお気持ちはいかがでしたでしょうか? 

14季ぶりに優勝ができて非常に嬉しかったです。
低迷期と周りからの声もありましたが、優勝の素晴らしさを学生に味わってもらえたことは感慨深かったです。

ー前監督の杉森さんが本郷監督から連絡があったと喜んでおられました。杉森さんはどのような指導者だったのでしょうか?

私がコーチとして指導していた時は、「何かあったら私が何とかするよ」と思い切って指導ができる環境を整えてくれました。
私が提案したことを「いいよ」と受け入れてくれて、背中を優しく押してくれました。

また、杉森さん以外も、私が知る限りの歴代監督に報告をさせていただくことが礼儀だと思いました。

これまでの”道”があるからこそ、今の龍谷大学硬式野球部があります。感謝の気持ちを込めて優勝報告を行いました。

伝統と歴史を作ってくれたことへのリスペクトは常に持っています。私はこの”道”をつないでいくのが役目だと考えています。

ー歴代監督の想いの”道”を繋げるんですね。

龍谷大学硬式野球部の道はこれからも続いていくことは常々学生へ伝えています。歴代続く龍谷のプライドや伝統は繋いでいくべきです。だからこそ、学生に繋ぐことの大切さを伝えています。

また、監督就任後に野球部の理念として、学内外から応援されるチームを目指すことを学生に伝えました。野球部から新しい伝統を創ってほしいと思っています。

今でも他部活の方とお話ししますが、大学内で競技の垣根を越えて応援し合う関係性をつくりたいと思っています。

以前に指導していた大学の時は、競技の垣根を越えて、野球部で試合会場まで応援に行っていました。他競技から学べることはありますし、同じ大学生が頑張る姿から刺激を貰って欲しいと思っています。

大学のチームだからこそ、学内で応援されるべき存在であるべきですし、学外でもそうです。
近隣の方も注目してくれているし、挨拶などコミュニケーションをしっかりとっていきたいと思います。

写真:本人提供

選手を観て、背中を押す

ー本郷監督は指導の中で軸にしているものはありますでしょうか? 

選手を「観ること」を意識しています。
スキルもそうですし、選手のちょっとした仕草なども観ています。

学生が思っていること、考えていることを尊重し、後押しすることが大切だと思っています。「選手を観察すること」を重要視しています。

100名の学生が所属しているので、一人ひとりへの指導は大変ですが、選手を観察しながら少しの変化をキャッチアップしています。

特に間違った方向へ行きそうなときは注意深く観ています。選手の些細な変化に気付ける指導者でありたいですね。

ー大学生は変化の多い時期ですし、意識をしなければ変化に気付くことは難しいと思います。学生を観ること以外にも意識されていることはありますでしょうか?

選手である前に“学生”として成長できる環境をつくりたいと考えています。
グラウンドで野球だけ取り組むのではなく、勉強、大学生活もしっかりと取り組むような指導をしています。

以前に指導していた大学では、成績の悪い選手を集め、勉強の時間を設けて自主学習を習慣に出来るような取り組みをしておりました。

基本的な指導方針は一貫しています。

また、現在は控えていますが、2019年にコーチとして龍谷大学に戻った時は、週に1度は共に食事をしながら野球界の先輩、後輩としてコミュニケーションを図っていました。寮や本部室では野球の技術以外のことも選手へ伝えるように心掛けています。

優勝するために変わった選手の考え方

ー2020年に監督に就任され2年で優勝を果たしました。指導されてから優勝までとても早いなと印象を受けています。

思ったより早かったなと思っています。
これも選手たちが成長してくれたおかげです。特に技術面では1、2年生が育ってくれましたし、3、4年生は精神的成長を感じました。

選手達は、一つひとつのことに対する集中力が高まり、勝ちたいと欲を出しながら野球に取り組む姿勢が変わりました。一戦一戦成長していたと思います。選手達に自信が漲っていました。

ー選手たちの変化により、チームの雰囲気はどのように変わったのでしょうか? 

それまでは、相手チームのことを考えすぎていたと思います。

自分たちが積み重ねてきた練習を信じて試合に臨めばいいのに、敵チームを意識しすぎてしまい、コントロールできないことばかりに気を取られ、自分たち自身でプレッシャーをかけていました。つまり、相手にコントロールされている状態です。

今は、自分たちがコントロールできるものに集中する考え方に変わり、自信を持てるようになったと思います。強いチームの流れになりました。

私自身も指導者の集まりや講習会に参加し、指導者としてレベルを上げたいと思っています。得た気づきは少しでもいいので、選手に還元しています。

ー選手の考えた方が変わったエピソードで、4年生が積極的に片づけを行うようになったとお聞きしました。

学生へ「勝つためには、強いチームになるためには」ということを問いかけ、彼ら自身で導いた結果です。

私は低迷期の敗戦理由を分析した際に、個々の力が活かされていないことがわかりました。防御率の悪さ、エラー数、三振の数・・・これらプレーを改善しなければ勝てません。

ただ、この課題は野球に取り組む姿勢や環境も原因の一つと考えました。
波打つグラウンドでは決して良い練習はできませんし、寮が汚ければ良い環境で生活が出来ません。

野球に取り組む姿勢や環境を整えることで、初めてプレーの課題が見えてくると思いました。
強いチームになるためには、良い環境で野球に取り組むべきです。龍谷大学硬式野球部の雰囲気を変えようと考え、私から選手に対し押し付けるのではなく問題定義をするようにしました。

写真:本人提供

最高の環境で、全力を尽くすこと

ー本郷監督ご自身が経験してきたチームでもそのような伝統があったのでしょうか? 

私が所属していたヤクルトスワローズでは、キャンプの時でも超一流の内野手が使用した場所は自ら整備していました。後輩の私が「整備しますよ」と声を掛けても「自分で直すよ」ときれいになるまでグラウンド整備をしていました。超一流選手は自分の周りを整えることを当たり前に行っているから超一流なのだと思います。

私が超一流から学んだこと、感じたことは学生に伝えていきたいですね。

ー本郷監督が感じるプロ選手とアマチュア選手はどのような違いがありますか? 

一つの物事に対するこだわり、探求心の突き詰め方がものすごく高いです。プロ選手は物事を全力で取り組むため得るものが多いのではと思います。
課題に対して追求することは、とても大切なことだと思います。

学生には、どのように課題に対して取り組んでいくかを考えさせるために、自分で計画を整理させ目標を立てさせています。

ー最後に、龍谷大学野球部に入部してほしいと思うような人財はどのような方でしょうか? 

野球はもちろん、何事も全力で取り組む学生ですかね。
あくまでも大学生としての勉学の先に課外活動の部活動があります。この勉学を疎かにしてはいけません。選手である前に学生です。

野球だけを目的に龍谷大学硬式野球部を選ぶことはミスマッチになると思います。学生として勉強を頑張ることは当然です。

部活動、勉強ともに全力で取り組む選手が来てくれれば嬉しいです。
そして、大学生活の中で部活動を通じて人間的成長を感じて欲しいと思います。