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MIKASAのボールで世界を笑顔に!株式会社ミカサ代表取締役社長 佐伯祐二の想いとは。

GUEST:佐伯 祐二
バレーボールを中心に、世界中の競技用ボールを作る株式会社ミカサの代表取締役社長。


世界中で日々使用される競技用ボールや各種スポーツ用品を扱う広島県にある株式会社ミカサ。今回、代表取締役社長にスポーツへの想い。そして、スポーツが持つ可能性についてお話を伺いました。

※本記事はnote移行前の旧SPODGEから2021年1月22日に掲載した記事になります。


世界の『MIKASA』になるまで

ー現在、バレーボールを中心に世界中で日々使用されている様々なボールや、スポーツに関するアイテムを製造・販売されている貴社ですが、スポーツアイテムを扱うようになったのには、どのような歴史があるのでしょうか?

我々MIKASAは、ゴム草履などのゴム製品を扱う『ゴム屋』からスタートしました。創業者である増田増太郎氏がハワイなどで勉強したゴムの技術を活かし、1917年に『広島護謨株式会社』を設立しました。

そして、1928年に日本初であるゴム製の空気注入式ドッジボールを開発しました。元々、豚の膀胱へ空気を入れて作られていたボールを、ゴムを使って作り始めたのが今のMIKASAにつながります。

その後、第二次世界大戦が始まり、企業統制令により、ゴムを扱うメーカーが合併させられました。戦時中は軍事品のゴム製品を作っていたようです。また、当社は船の部品も扱っていて、ゴムロールや工場で使用されるゴムライナーベルト(ベルトコンベア)を作っていました。

終戦後、GHQの指導により運動用ゴムボール、特にドッジボールの生産を開始します。

ー日本の歴史に密接な関係があるのですね。

そして、1964年に開催された東京オリンピックでは、バレーボールで使用されたボールを作っていました。ただ、当時は9社でバレーボールの試合球を作っていたようで『MIKASA』と表記せず、無記名のボールを作っていました。

東京オリンピックでは日本女子バレーボールチームが金メダルを獲得し、東洋の魔女として人気が出ました。『アタックNo.1』や『サインはV』といったバレーボールのマンガやドラマが流行り、空前のバレーボールブームが起きます。

また、「他社に負けない強みが必要だ」と考えた当時の社長がバレーボールに目を付け、1969年に国際バレーボール連盟と手を組み、『MIKASA』ブランドとしてバレーボールの公式試合球に使っていただくことが出来ました。

今では、国際バレーボール連盟がIOC(国際オリンピック委員会)に対して「オリンピックのボールは『MIKASA』」と推薦をいただいており、オリンピックは当社のボールが使用されています。

ーMIKASAさんは、バレーボールの他にも、バスケットボールやサッカーボールなど、幅広い競技のボールを扱っていると思います。 

バレーボール以外にも手掛けていたようで、1957年からサッカー、バスケ、ハンドボール、ラグビーボール、ドッジボールなど作っていたようです。

想いが詰まっている『MIKASA』のボール

ーオリンピックの(バレーボールの)公式試合球として選ばれた一番の理由はどのような点だと思いますか? 

納期・品質・コストといった全てにおいて満足いただいていると自負しております。

我々が扱うものはボールなので、「丸さの保持」が重要です。もちろん、ゴムは使っていたら変形していきます。

また、全体的なバランスを保つことが必須です。空気注入式のボールには空気穴のバルブがあるので、バルブの重量分バランスが偏ってしまいます。ですから、バランスをとるために空気穴の反対側はバルブの重量分重くしています。

我々のボールは一つずつをタイで働く工員の方が手張りで表皮を貼っています。一部機械で作っているものもありますが、バレーボールは基本的に手作業で作っているんです。

一つのボールには、技術と想いが詰まっているんです。だからバレーボールやバスケットボールは蹴ってはいけないんです。

ー小学校の頃、バスケットボールやバレーボールを蹴って怒られたことがありました。やっと理由が分かりました。

単純に「蹴るな!」では良くないですよね(笑)こういった理由があるんです。

ただし、仮に蹴っても簡単に壊れませんし、破けたりしないよう、当社の製品はしっかりと作られていますので安心してください。

ー時代の流れに伴い、何か変わってきたことはありますでしょうか? 

昭和の高度経済成長期から比べると、国内の売り上げは右肩下がりです。おそらく、少子高齢化が原因だと思います。マーケティングやブランド戦略はまだ力を入れて取り組んでいないので、今後は変えていかなければいけないと思っています。

最近は、デザインや有名選手が使っていることで注目され、売れる商品などあります。単なるボールメーカーだけではなく、こういった部分も大切にしていかなければいけないと思っています。

ー各競技でも、競技人口の減少が課題の一つだと言っていました。日本の場合、一つの競技を続けることが良いという風潮があると思いますが、海外のように複数の競技を取り組めば競技人口も増やせますし、それに伴ってスポーツビジネスの機会も増えると思います。

野球だけ、サッカーだけ、バレーボールだけ・・・ではなく、色んなスポーツを取り組んでほしいですよね。老若男女問わず。

あとは、プロスポーツとして、それぞれの競技が独り立ちをすることが重要だと思います。会社のクラブチームでは、企業経営が困難な時、スポーツチームが最初に縮小されると思います。

プロ野球やJリーグ、最近はBリーグも人気がありますが、バレーボールのVリーグも、もっと人気が出てほしいですよね。

ビジネスチャンスと言えば、もう一つは海外を視野に入れていきたいと思っています。国内はマーケットの奪い合いになっているので、海外への進出が必要だと思っています。当社の場合、おかげさまで、全世界でバレーボールは使用されていますし、競技の人気もあります。加えてサッカーやバスケの領域も広げていきたいと思います。

スポーツを好きになってもらうため。

ーあくまでもイメージですが、プロ、アマチュア問わず、国内でスポーツをする人たちが、“質”にこだわるようになったと感じています。

趣味にお金をかけている方が増え、スポーツ全般を見ても個人で取り組むスポーツが人気ですよね。

マラソンや登山。最近ではキャンプなど、大勢で集まってスポーツをする事よりも個人消費が増えていると思います。サッカーもフットサルが人気ですし。

ただもっと、みんなで取り組むことが増えてもいいんじゃないかなと思います。

ー個人スポーツもありますが、大勢で楽しむスポーツも楽しいですし、ボールを使った競技は一人でできないから楽しいのだと思います。

私が伝えたいのは、小さい時から色々なスポーツを取り組んで欲しいんです。夏は野球、冬はサッカーを取り組んでもいいじゃないですか!

日本でこの考え方はメジャーではないですよね。

スポーツはもっと自由であっていいと思います。

ー日本の場合、教育的観点を忘れてはいけないという考えがありますからね。

精神論や根性論のような考えがありますからね。単純に、もっとスポーツを楽しんで欲しいです。

ー本来のスポーツは、もっと楽しむものですよね。

経営者としては売上を上げたいと思いますが、少子高齢化社会などの要因で、環境や経済の動きが変わってきました。

その中でも、何でもいいからボールを使ったスポーツをやってほしいなと思います。

世界中、コロナウイルスの影響で心の病になる人が増えました。スポーツをして、ボールを投げる、蹴るなどストレス解消をして、心身ともに健康になってほしいなと思います。

難しいテクニックやフォーメーションは一定のレベルからでいいんです。まずはサッカーの楽しさ、バスケの楽しさ、バレーボールの楽しさに触れることが重要だと思います。これこそ、気付きを得ることですし、スポーツから学ぶことがあると思います。

ーありがとうございます。最後に、これから『MIKASA』が目指すものは何でしょうか?

我々の本社がある広島県は、広島カープ(野球)、サンフレッチェ広島(サッカー)、ドラゴンフライズ(バスケ)、JTサンダーズ(バレー)、マツダブルーズーマーズ(ラグビー)など、様々なスポーツチームがあります。
そして、世界で活躍する広島のスポーツメーカーの我々だからこそ、『楽しさ、笑顔』をキーワードに、更に活動の幅を広げていきたいと思っています。

ボールを通して、スポーツの楽しさ、笑顔を広げたいですし、もっと伝えたいです。大会優勝やメダル獲得などの目標もあるでしょうが、まずはスポーツを楽しむことを忘れないで欲しいですね。スポーツを取り組む人が増えれば、競技人口が増え、日本のスポーツレベルも高くなるでしょう。

楽しむことを忘れなければ、今は自分でテクニックを学ぶことができますし、自分で考えるヒントがたくさんあります。自分で考えて、楽しむことが大事なことだと思いますね。

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