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『ロサンゼルス・エンゼルス』を支える若き日本人トレーナー ~アスレチックトレーナー  池田昂己~

GUEST:池田昂己

写真:ご本人提供

アスレチックトレーナー。小学生から高校生まで野球に熱中していた。
アメリカのメジャーリーグの球団である『ロサンゼルス・エンゼルス』のアスレチックトレーナーとして活動する。

略歴
21歳で渡米し、カリフォルニアにある短大、南ミシシッピにある大学にてアスレチックトレーナーや運動学について学んだ。
大学卒業後は、アスレチックトレーナーとして働きながらジョージア州にある大学院へ進学し、組織論やリーダーシップ、教育学を学んだ。
2023年1月からエンゼルスの6軍トレーナーに従事。

https://www.instagram.com/koki_ca_ms_ga_az/


野球以外に熱中することとして、アスレチックトレーナーと出会い、勢いでアメリカへ渡った。英語も話せない初めての町で必死に勉強を重ね、メジャーリーグの球団であるエンゼルスのスタッフとして活躍している。
スポーツをする側からスポーツを支える側へ変化した池田さんへ、スポーツをどのように考えているのかをお聞きしました。



野球以外に熱中するものとの出会い

ー池田さんの現在の活動内容を簡単に教えてください。

アメリカのアリゾナ州で、メジャーリーグの球団である『ロサンゼルス・エンゼルス(以下、エンゼルス)』のアスレチックトレーナー(スポーツ現場に特化した医療従事者)として活動しております。

具体的には、選手の応急処置、その場に応じたケガの評価(重症、軽傷)、リハビリ・ケガ予防・ドクターといった各スペシャリストと連絡を取り合うなど、選手に寄り添ったサポートをしております。また、体調については、担当する全ての選手に携わり、カルテのような書類などの対応も行います。

各選手のケガ、体調、雇用歴、場合によっては家族構成まで認識しています。

ー担当される選手はどのくらいいらっしゃるのでしょうか?

エンゼルスは全8軍あり、200名以上の選手が在籍する大きな球団です。私は40〜50名いる6軍選手の担当をしております。彼らは夢を掴むためにチャレンジしており、目標に向かって高め合っています。

ー選手と一番近い距離でサポートされる中で意識されることはありますか?

アスレチックトレーナーは選手の近くでケガを評価したり、怪我の対応をするスペシャリストです。また、各スペシャリストとコミュニケーションを取り合うハブのポジションでもあり、とても重要な役割です。

選手と一番近い距離にいて声が聞けるのはアスレチックトレーナーだけです。ですから、コミュニケーションは意識して選手と交わしています。何気ない会話が、選手のコンディションに携わるうえで重要になる可能性があるからです。

選手のそばでサポートできることこそ、アスレチックトレーナーの魅力であり、私が目指した理由です。

ーアスレチックトレーナーを目指すきっかけはあったのでしょうか?

小さい頃から高校まで野球に熱心に取り組み、野球を中心とした生活をしてきました。一方で、高校卒業までの間、学校での勉強に本気で取り組んだことはなく、自分の人生にとって勉強は必要なものか疑問を持っていました。

高校卒業後は、これまで真剣に取り組んできた野球に携わりたいと考え、スポーツに関連する専門学校への進学を決めました。その専門学校でアスレチックトレーナーという職業と出会いました。

アスレチックトレーナーの勉強はとても楽しく、野球と同じくらいの熱量を持つことができました。「これが自分のやりたいことだ。自分の可能性を広げられることだ」と思い、始めて勉強に熱中することができましたね(笑)

勉強を進める中で、アメリカでは働きながらアスレチックトレーナーについての高い教育を受けられることを知りました。
専門学校卒業後、自分を試したいと思い、英語は全く話せなかったですが、勢いでアメリカへ飛び立ちました。

写真:ご本人提供

ーアメリカではどのように過ごされたのでしょうか?

アメリカでは、カリフォルニアにある2年制の短大へ進学し運動学を学びました。卒業と同時に4年制の南ミシシッピ大学へ編入学し、運動学に医療を加えた、より専門的な学部で学びました。

卒業後、ジョージア州にある大学でアスレチックトレーナーとして働きながら、大学院へ進学し、組織論やリーダーシップ、教育学を1年半の間学びました。そして、大学院卒業と同時にエンゼルスに声をかけていただき、2023年の1月から今の現場で働いています。

ー言葉や習慣など日本とは全く異なる中で、池田さんがどのように過ごしていたのか興味があります。

英語は全く話せない中でアメリカへ行ったので苦労しました(笑)
積極的にアメリカ人の友人と食事をするなどコミュニケーションを取って日々必死に勉強していました。また、アメリカに渡って1年目の冬休みを使い、電車でアメリカを1周しました。現地でたくさん話すことが一番の勉強になると思っていましたから。

今振り返るとかなり無謀なチャレンジだったと思います。ただ、野球の楽しさと同じくらい、楽しかったです

世界最大の球団での「責任」

ーエンゼルスに携わることができ、考えなど変わったことはありますか?

エンゼルスに所属する選手たちは、夢に憧れ、生活を掛けて取り組んでいるので、選手の真剣さは他の環境とは違うと感じています。選手1人の契約金だけで数億円という莫大なお金が動きます。

そういう選手に触れることに私も責任を感じています。
大学時代もアメフトや野球のDiv1のチームに携わりましたが、メジャーリーグとなると、お金・ファン・関係者の数が桁違いいます。その中の一つのピースとして、歯車を狂わせないように責任を持って日々を過ごしています。

私はチームの中でも若手です。同僚にはプロの世界で20年やっている人もいます。同僚から良い刺激をもらえている素晴らしい環境で仕事に取り組めていて、日々楽しく成長できると思います。

ーエンゼルスには池田さんの他にも日本人はいらっしゃいますか?

メジャーリーグで活躍する日本人は選手以外にもたくさんいらっしゃいます。
私のチームにもマッサージセラピストなど数人います。

過去の日本人選手の活躍や先人たちが真摯に仕事をしてくれていたおかげで、日本人が受け入れやすい環境があると思います。

何十年もプロの世界を経験しているコーチや監督は、それぞれの環境で日本人選手やトレーナーと触れる機会があり、日本の文化に好意的な人や日本語で挨拶をしてくださる方も多くいます。その為、日本人がチームにいることで喜んでいると思います。

チーム内では、日本の話題で盛り上がることが多々ありますよ。特に先日のWBCは盛り上がりましたね。
日本vsアメリカという夢の対決ですし、大谷選手の活躍は全米が注目していたと思います。

海外で叶えたい夢

ーエンゼルスで叶えたい夢を教えてください。

個人的な目標はチームの中で若く、夢を抱く選手の担当をしています。その選手がより高いレベルに上がれるようにサポートしたいです。そして、私自身もメジャーリーグのトップチームでアスレチックトレーナーとして活躍したいと考えています。

大学で教育学やリーダーシップを学んだので、私がチームをマネジメントしていくリーダーとなり、選手やアスレチックトレーナーの若い世代が成長できる環境を作りたいです。

写真:ご本人提供

ー池田さんは選手から選手を支える立場になりました。「選手を支える」方にとってスポーツとはどのようなものでしょうか?

スポーツの魅力はどんな立場でも「感じられる」ことだと私は思います。
驚くようなプレー、悔しさ、そして、感動。日々、スポーツの魅力に取りつかれているような気がします。

ファンを魅了する一部として関われることを誇りに思っています。普通の生活では感じられない感動があります。スポーツだからこそです。
感動を生み出せる一部になれることこそ、この仕事の魅力や意味になると思います。

ー今後日本に戻って活動したいなどの思いはありますか?

私は日本の野球で育ちました。時々、日本のスポーツが恋しく思うことがあります。
ただ、日本で働きたいかと言われると、現時点ではイメージができません。

今はアメリカの地で一生懸命今の仕事に取り組みたいです。私の契約も選手と同じように1年契約なので、できるだけの経験を積み、自身を磨きたいです。

7年間アメリカにいて、日本に帰りたいと思ったことは2回だけです。私を応援してくれる親や友人がいるから今を頑張れています。自分が活躍していることこそが、お世話になった人たちへの恩返しだと思っています。

今の環境を手に入れられたのは、タイミングと運と少しの実力です。この環境に感謝したいです。

ー池田さんが思う、スポーツの価値・可能性について教えてください。

スポーツが持つ価値・可能性はものすごくあると思います。
スポーツだから感じられる感動がありますし、性別や年齢、宗教を飛び越えて、お互いリスペクトできるものです。

人を成長させるもの、人を思いやれるもの、人をより良くするものこそがスポーツだと思います。

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